開発編 コラム

3社が同時に止まった日:2026年9月3日の教訓

  • 『アプリ開発者向けAIツール大全』Chapter 5(AIモデルをまとめて使う)より
  • 2026年11月5日版

この章では「特定のモデルに縛られない設計にしましょう」とお伝えしてきました。その理由を、これ以上ないほどはっきり示す出来事が、本書の更新作業のさなかに起きました。

2026年9月3日、ChatGPT・Claude・Grokの3つが、ほぼ同じ時刻に、そろって止まったのです。復旧まで約30分。ChatGPTには3万5,000件を超える障害報告が寄せられ、AIコーディングツールのCursorも巻き添えで動かなくなりました。

なぜ3社同時だったのか。報道によると、Microsoftのクラウドサービス「Azure」の米国東部のデータセンターで障害が起き、そこを使っていた各社が一斉に影響を受けた、と見られています(ただし、各社は原因を公式には発表していません)。

ここから学べることは2つあります。

1つは、会社が違ってもインフラは同じかもしれない、ということです。「ChatGPTとClaudeの2社に分けているから安心」と思っていても、その下のサーバーが同じなら、同時に倒れます。

もう1つは、この日、GoogleのGeminiだけは動き続けたということです。Googleは自社のクラウドで動かしていたためです。

だからといって「Geminiが一番安全」という話ではありません。次は逆になるかもしれません。お伝えしたいのは、あなたのアプリが誰かのAPIに依存している以上、止まる日は必ず来るということです。

対策は難しくありません。AIにアプリを作ってもらうときに、「AIのモデルは後から差し替えられる設計にして」「APIが応答しないときは、ユーザーにエラー画面ではなく『混み合っています。少し待ってからお試しください』と表示して」と一言添えておく。それだけで、障害の日にお客様が受ける印象はまったく変わります。

この章で紹介したOpenRouterのような仲介サービスを使っておくのも、有効な備えの1つです。